店主ブログ

店主のこだわり

桃山時代にもあった上手と下手

私のコレクションの中にも「辻ヶ花」の上手と下手があることに気づいた。

画像① 「檜垣に藤菊文辻ヶ花染(桃山:16世紀)」

 

画像② 「扇面散らし文辻ヶ花染(桃山:16世紀)」

 

 

画像①は絞りがビッシリと密に施され隣り合う模様との境は狭く、絞りの輪郭が明瞭だが、②は模様が散漫で絞りの輪郭が甘い。

 

決定的な両者の違いはカチン(墨)で描かれた仕上げの線である。①は精緻でしかも何の躊躇もない線が力強く引かれているが②は線が稚拙で粗雑だ。

 

当時は身にまとう人の身分差があって上手物は上層階級へ、下手は庶民クラスへと目利きが選別していた。だが今の時代、この玉石が入り混じって市場に出回るから消費者自身が峻別する眼を持たないと下手物を高い値段で買う羽目になる。

 

とにかく先入観、肩書きを捨て無心に多くのものを観る以外に上達の方法はないのだが、よくできた偽物や本物なら中古品でも良いという消費者心理が寛容な昨今は選択肢が広がるだけにかえって難しい。

 

 

 

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銀座師走展と番組収録

今年も師走展の季節になった。昨年は療養中にもかかわらず上京してみたが、初日でダウン、2日目に帰京する羽目になりお客様や社員に迷惑をかけてしまった。

 

 

今年も相変わらずの療養中であるが体調もかなり回復し、普段は仕事に専念する日々を過ごせたので満を持して上京するつもりである。作品は腕に撚りをかけた新作を多数出品ができそうなので楽しみにおいで頂きたい。

 

今年は会場の都合で11月30日〜12月2日までという月末をまたいだ開催なので、ご来場者の皆さんはお忙しい事と思うが、私は年末の賑わいを見せる銀座を久しぶりに楽しめること期待している。

 

東京から帰ればNHKの「古裂」の魅力を紹介する海外向けの番組「CORE Kyoto」の収録が控えている。

 

 

「古きを温ね、新しきを創る」を私がどう実践しているか海外の人々に紹介する内容で、日本の染織品の素晴らしさが認識され評価が高まり、私の古裂コレクションが単なる道楽ではないことを証明してくれる良い証として残されるだろう。

 

 

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豊臣秀吉をめぐる不思議な縁

先日ある桃山時代の唐織裂を手に入れた。2m x 2mの長大な裂は竿通しが付けられ「風穴」(風を通す開口)が施された奇妙な裂である。

 

 

まず驚かされるのは、その色彩である。500年は確実に経過しているにもかかわらず、ご覧の通りほぼ完璧な色彩が残存している。

 

詳しく見ると能衣装として職製されたらしいが何らかの理由で幕に仕立て直されたようだ。

 

この裂の出所がまた面白い。旧蔵は三条大橋のたもとに桃山時代にはすでに存在していた「M針屋」で豊臣秀吉が、まだ木下藤吉郎と呼ばれた時代に針売りとして全国を行脚していたという伝承がある。

 

彼は行商の過程で得た戦国大名達の情報から仕えるべき武将を探し求めていたという。その結果、織田信長に白羽の矢を立て、信長の草履取りから太閤にまで登りつめた。

 

その針屋から今回出たのが「菊桐模様唐織」(太閤秀吉を象徴する模様で高台寺文様と呼ばれている。)だから余計に因縁ありそうで興味が湧く。何故?どう言う経緯で?この一枚の異様な唐織が針屋に伝来したのか?

 

裏地に雨汚れの痕があり、もしかして醍醐の花見の折、御座所に掛けられた幕ではないかと思っている。

 

 

 

 

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私の杉本博司論

今年の文化功労者賞に中村吉右衛門丈と杉本博司氏の知人2人が受賞されることになり大いに喜ばしいことである。

 

杉本さんは念願の美術館(?)もしくは隠居場(?)を10月にオープンされたようで重ね重ねのお目出度である。

 

私はテッキリ「杉本博司美術館」という名称かと思いきや「江乃浦測候所」という名称らしい。実に杉本さんらしいシャレの効いた装飾のないネーミングに人柄が感じられる。

 

 

彼は探究心の強い人だ。もっともアーティストと呼ばれる仕事をしている人から探究心を除けば何も残らないだろうが、彼は「人間はどこから来たのか?」「人間とは何者か」?という大きな命題の答えを求め続ける求道者である。

 

目では見えない遥か彼方に潜む真理を求め、写真や建築、舞台演出という手段を駆使して具現化を試み続けている。

 

水平線のさらに先を見るための施設「江乃浦測候所」の完成は彼にとって終着点ではなく、更なる高みを目指して多分、死を迎えるまで求め続ける通過点の一つであろう。

 

追求のために全ての資産を投じ「江乃浦測候所」を完成させた実現力を兼備した杉本さんに敬愛する弟子としてエールを贈りたい。

 

 

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消費者のニーズは変化する

きもの需要は全体として減少しているが、種類別のニーズも変化している。

 

一昔前、呉服業界がブライダル産業の一端であった時代は礼服中心であったが、ブライダル環境の変化に伴ってセミフォーマルが中心となり、今やカジュアルが一番好まれている。

 

 

今回の展示会の結果を見てもカジュアルっぽいものが好まれフォーマル的な訪問着が敬遠される結果が出た。きものを着用するシーンが格式張った場所から気楽にきものを楽しめる場所へと変化していると考えられる。

 

作り手としては出来るだけお客様の希望を忖度して、きものや帯を作っていくのはビジネスとしては当り前だが、これだけは譲れないという範囲がある。例えばアニメのキャラクターや野暮なモチーフはお断りしている。

 

今、私の頭の中にあるのは洋花をモチーフにモダンな色やぼかしと組み合わせた付下げきものである。今一つ売れ行きのよくない「ソワレ」シリーズをより着易いものに変化させ、和洋を取り混ぜたものにしたいと思っている。

 

帯は定番の「御所解」や織物の「透し織」などと組み合わせるのも一興ではないか。こういう事を考えているのが私にとって一番楽しい時間である。

 

 

 

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