日記帳

女将の思い出

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  • 2022.10.12
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朋 遠方より来る

10月に入り、行動移動制限が緩和されて、京都の中もいきなり市井混雑状態となりました。経済的には大変結構な事で、観光主体の京都は、潤いを期待したいところです。 先日、主人の一周忌を料理屋さんで無事に営むことができましたが、実の所は、緩和の期待をして良いものか、心配でした。しかし、おかげさまで宴席を持…
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  • 2022.08.26
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八重山上布

今夏は、移動制限がなくなり自由に旅行が出来るようになったので、3年半ぶりに青い海を求めて、長男、次男家族と八重山諸島へ行きました。幸いにも台風にも遭わず、海も空も紺碧に輝き、久しぶりの解放感で、日常の雑念を忘れてひと時の夢心地です。 現地に着くと、私は仕事柄、早速サトウキビ畑を眺めながら、タク…
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  • 2022.07.12
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手許で保管すべき物

亡夫が遺した古裂蒐集の点数がおおよそ百点余り、その他の資料を合算すると二百点程となり、将来的に如何ようにするのが得策か…と、この一年間、私の頭の中はこの悩みでいっぱいでした。 存命中、主人は何とか染織歴史的に貴重であり、一貫性があるから分散する事なく、全て一括で美術館、又は染織学科のある大学…
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  • 2022.06.15
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人生の賞味期限

昨今、医療も進み、現代人の寿命が百歳越えの時代が来ました。 喜ばしい反面、老後の人生時間をどのように過ごすかが大きな課題となり、各種紙面にはこの解決法を取り上げた数々の宣伝が載っています。 最近、私はつくづく思うのですが、学業を終え、一般社会人となり、現役労働が始まります。その間、試行錯誤の人生…
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  • 2022.05.12
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落花枝に帰らず…然れども

この五月、三年振りに私の「謡い会」がコロナ前の日程に戻り、五月晴れの清々しい一日でした。演目は素謡い四十五分間の「屋島」でしたが、実にタイムリーにNHKの大河ドラマ「鎌倉どの…」も壇ノ浦シーンと重なりました。 この「落花枝に帰らず…云々」の文章は一般的に皆様の御存知の通り、数々の同意…
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  • 2022.04.21
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たまには気分をかえて…

私の平日は、朝八時四十五分には店に行き、店内及び外周辺の掃除を完了した社員と朝礼をしながら、私は社員の健康状態を視認します。 午前中は一日の仕事の段取りを決めて職人さん達への仕事の配分、指図などしながら、顧客の希望、期待に応えるための新しい作風や図案等を熟慮します。 週末になると仕事か…
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  • 2022.03.17
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日本伝統の習い事…「道」

現在世の中の習い事は多様化し、日本伝統のもの以外に外国から伝わったものも増えて、最近の子どもたちは親に手を引かれて忙しく渡り歩く光景を目の当たりにします。 習い事は人間の感性や、精神力の幅を広げるので良い事だと私は以前から思っておりますが、その中で特に日本の伝統的な習い事は全てに「道(どう)…
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  • 2022.02.18
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春を告ぐ…昔々の都をどり

最強寒波到来とかで、家に閉じこもり、古書棚を整理していると、何と大正五年四月の都をどりの演目本が出て来ました。目で追っていくと、祇園町が遊郭として成り立ったのは享保十七年と記され、幾多の困難を乗り越えて、お茶屋を中心に歌舞吹弾の技を観客に披露したのが、明治五年を第一回目とした都をどりだったそうです。…
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  • 2022.01.17
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私の古渡更紗帯

早いもので、かれこれ四十年ほど前に主人が古裂に興味を抱き、近所の骨董屋廻りを始めました。その頃は古裂に、さほど骨董的価値を見出す人が少なく、もっぱら茶道具人気でしたから安値で買い求められたので、徐々に収集量も増えて参りました。 そんな中で特にインドより渡って日本に入ったインド古渡り更紗が好きで「こ…
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  • 2021.12.14
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中村吉右衛門丈の想い出

恐れていた知らせが入ったのが十一月二十八日深夜でした。中村吉右衛門丈が亡くなったのです。七十七歳の生涯でした。 昨年春にお会いした折に「八十歳になったら人生最後の勧進帳の弁慶を演じるのが楽しみなんですよ!」と腹の底から実に嬉しそうに、ハツラツと凄い情念を持って「勧進帳」への思いを語り、私も是非とも…
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  • 2021.11.15
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「相変らず…」の有難さ

年末が近くなると床間の軸は「無事」と書された掛物に替えます。今年も家業、家族に何事もなく「相変らずの一年だった…」と云う意味を持ち、感謝と来年も「相変らずの一年でありますように…」と祈る気持ちで床飾りをします。 しかし、ここ二年間は年末にこの軸を掛けても、コロナ禍で人の心が閉ざされ虚無感で…
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  • 2021.10.08
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建具のころも替え

十月に入り秋の透明感ある朝晩の空気を期待してましたが、あら!まだ残暑が続き温度計では夏日を記録しました。それでも我々の京都では十月一日より建具のころも替えをのれんと共に準備して掛け替えます。 夏の簾戸から月見障子の建具や襖に替え、更にそれまで敷きつめられていた籐網代を取り除き、畳表となります。…
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  • 2021.09.06
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やっぱり京都は良いところ

京都に住んで半世紀が過ぎ、すっかり日常生活が当たり前の毎日となりました。出張で他県へ出かけても、帰りの新幹線が京都駅のホームに滑り込むと実にホッとして「やれやれ、帰って来たわ…」と思うだけ心が落ちつく場所となりました。 私が嫁いだ頃は町並みも朝方はひんやりと静けさがあり、家々の軒下も低く、ひっそり…
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  • 2021.07.31
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「のれん」の責任

真夏の強い陽差しの中で照りつけられた麻のれんを見つめて、改めてその時間の流れを感じました。この新門前で二百年余り呉服の生業を営んで来ましたが、京都の中ではまだまだ新参者でもっともっと長い歴史を持ったお店は沢山あります。 戦後の世の中、社会の速い変化の中で京都だけは変わる事なく、昔のままの日常を過ご…
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  • 2021.07.06
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私のタンス その2

前回のブログに続き、私のタンスの中より今回は着用時の選び方や楽しみ方などを私なりに書き留めました。 自分の普段着、お稽古等は紬と帯との組み合わせが多いのですが、私は結城が大変好きで、着崩れがなく軽くて着易い事と、周りの人々との融和が利点です。冬は濃い色のきものに少し明るめの暖色帯を…春先は逆に、初…
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  • 2021.06.05
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私のタンス(箪笥) その1

私の着物入門が御所解染帯ではじまり、家業のおかげでだんだんと結城や紬、小紋等から茶道、能などと着物と帯との範囲が広がり私自身の感覚が変わる中でタンスの中味も多種多様に柄・素材のこだわりが増して来ました。 用途に応じた着物と帯の組み合わせ方は、祇園のお茶屋のお母さん(女将さんをお母さんと呼びます)達…
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  • 2021.04.28
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人は石垣

五月を待たずに河岸堤にはたっぷりと葉をつけた柳の木が、初夏を思わせる風にゆらりゆらりと心地良さそうに枝を揺らしています。 そんな中でふと、振り返ると、町並みの家々の入口扉に冷たく悲しそうに貼り紙されて「休業」や「廃業」のお報せです。その貼り紙も黄色く変色している所を見れば、もう随分前から貼られてい…