READ 2018.05.24 日記帳/先代の教え/ 三畳の小宇宙 我家の2坪の坪庭にようやく苔が入った。苔の上に鎮座する観音様も、これで座り心地が良くなったように見える。 どんな小さな場所にも美の空間を求める心は、京町家に坪庭を設える京都人の美学である。 ぎをんの店の坪庭は、5坪ほどの土地に手水鉢と鎌倉時代の灯籠と松、紅葉を植えた庭で、この間取…
READ 2018.05.19 日記帳/先代の教え/ 待望の新人がやって来る。 6月1日から男女2名の新入社員が「ぎをん齋藤」に入社することになった。 最近は幹部社員が面接してくれるので、私は委細は知らない。ただ、彼らを見た瞬間の笑顔や振る舞いを、10分の1秒で判断したところ、なかなか感じの良い男女だと直感した。2名とも将来は営業職を希望しているが、適性を見極めるまでは方向を…
READ 2018.04.26 日記帳/先代の教え/ 完璧な仕上がり 数ヶ月前に紹介した「金更紗」の再現が帯として完成した。 下記に示した通り、ほぼ完璧な出来上がりと言っていいだろう。 再現したものが下の画像で、 そしてこれが、前にブログにも掲載した再現のもとになった袱紗の裂である。 &n…
READ 2018.04.14 日記帳/先代の教え/ 単衣、夏物異変 そろそろ単衣、夏物の制作が本番の季節になった。最近の傾向からして6月、9月は単衣、7月、8月は夏物として厳密に区別するのは現実的ではなくなったと考えている。 6月から9月までの単衣夏シーズンを共用できる素材で提案する方が喜ばれるようになった。きものの「決まり事」…
READ 2018.03.12 日記帳/先代の教え/ 隠れた古裂コレクター 先日ある古裂を専門に扱う美術商と話をしていた中で親子三代に渡って古裂を蒐集し、しかも誰にも見せずに密かに楽しんでいる人が京都に居ると聞かされた。 さすが京都、千年の都だけのことはある、誰も見たこともない古裂を蒐めては飾り、それを眺めながら美味しい酒を飲むとは、なんと風流な人がいるも…
READ 2018.03.05 日記帳/先代の教え/ 今、話題の「働き方改革」 世間ではサービス残業や過労死が大きな社会問題になっているが 「ぎをん齋藤」では以前から残業なし、定年無しを打ち出している。 これは私の労働に対する考え方が生涯現役を基本として大切にしているとことがベースになっている。ただ、若い労働力を確保していくためには、一定の年…
READ 2018.02.20 日記帳/先代の教え/ 久々に巡り合った「金更紗」の名品 同じ金更紗でも上質のものは細工が細かく、金の厚みも違う。いわゆる「露金」と呼ばれ純金がふんだんに使われている。 加賀前田家伝来の本品は「萌葱地花蔓草文様金更紗」という長ったらしい名前が付けられ、型を使わない手書きの金更紗の中でも一級品で、同じ裂が東京国立博物館に所蔵されている。 更紗と一般に…
READ 2018.02.15 日記帳/先代の教え/ 金(きん)の時代 マネーではなく黄金という意味である。黄金が主役であった時代というと、まず頭に浮かぶのは桃山時代、太閤秀吉は「聚楽第」という別荘の屋根瓦にも金箔を貼りつけた。遡れば「織田信長」が建てた「安土城」も最上階は黄金に輝いていたというから天守閣の屋上に「金閣寺」を置いたようなものと想像すれば良いのか。 &n…
READ 2018.02.10 日記帳/先代の教え/ 人生の達人 日課の散歩コースには多くの野鳥がやってくる。鴨、シロサギ、ゴイサギ、川鵜、鳩、雀、鳶、セキレイ、百舌、特に最近、小鴨が親鳥の後を追って泳ぐ景色はとても愛くるしい。 季節ごとに野草は美しい花を咲かせ一年中、飽きることない美を見せてくれるが、この自然界が与えてくれる恩恵でさえ無限ではない。 &n…
READ 2018.02.06 日記帳/先代の教え/ 私が消費者に伝えたい事 私は物作りを通して「上質」と「センス」を伝えるのが仕事だと思っている。上質な物をわかりやすい言葉で表現すると「薄くて軽く温かいもの」と言い換えてもいい。この定義は和服だけに限らず洋服の世界でも同じことがいえるのではないだろうか。 和服の中でも織帯に例えれば手織りのものは「薄くて軽い…
READ 2018.01.23 日記帳/先代の教え/ 京都人の義理人情 多分、もっとも長いご贔屓を頂いているお客様の1人が先斗町の現役芸妓さん、Tさんである。私が先代の供をして行くようになったのは60年ほど前になるだろう。若い頃のTはとても怖い芸妓さんでお手入れのものをお預かりに行くと二階の階段から投げてよこすようなことは当たり前で、呼び鈴を2回押したたけでも「うるさい…
READ 2017.12.22 日記帳/先代の教え/ 私の古裂活用法 人はいつも新しいものを求める。目新しい物をいつの時代も求め続ける性を人は持っているものである。 最新モードのデザイナーは新しいコンセプトを提案し形にして見せてくれる、それを女性は喜んで受け入れる。ドイツの高級車も7〜8年でモデルチェンジしドライバーはその目新しさに惹かれ、見飽きた車…
READ 2017.12.15 日記帳/先代の教え/ 長時間インタビュー体験談 NHKの海外向け番組「Core Kyoto」からのオファーで古裂の魅力について語る長時間インタビューを受けることになった。 何しろ初めての体験で、カメラを向けられた状態で質問に答えるのは容易では無い。さらに声帯が十分働かない健康状態で話をすること自体が辛い。 …
READ 2017.12.08 日記帳/先代の教え/ 今年の師走展 2017年の師走展も無事に終了した。大過もなく無事終了できたことを心より感謝申し上げます。 来場者も昨年ほどではないが120名を超える方が月末の忙しい中、銀座に足を運んでいただいた。 今年の特徴は月末、月初の開催となったため事前に京都に来て、お買上げいただく方が多…
READ 2017.11.15 日記帳/先代の教え/ 桃山時代にもあった上手と下手 私のコレクションの中にも「辻ヶ花」の上手と下手があることに気づいた。 画像① 「檜垣に藤菊文辻ヶ花染(桃山:16世紀)」 画像② 「扇面散らし文辻ヶ花染(桃山:16世紀)」 画像①は絞りがビッシリと密に施され隣り合う模様との境は狭く、絞りの輪郭が明瞭だが、②は模様が散漫で絞りの輪郭が甘…
READ 2017.11.08 日記帳/先代の教え/ 豊臣秀吉をめぐる不思議な縁 先日ある桃山時代の唐織裂を手に入れた。2m x 2mの長大な裂は竿通しが付けられ「風穴」(風を通す開口)が施された奇妙な裂である。 まず驚かされるのは、その色彩である。500年は確実に経過しているにもかかわらず、ご覧の通りほぼ完璧な色彩が残存している。 &…
READ 2017.11.04 日記帳/先代の教え/ 私の杉本博司論 今年の文化功労者賞に中村吉右衛門丈と杉本博司氏の知人2人が受賞されることになり大いに喜ばしいことである。 杉本さんは念願の美術館(?)もしくは隠居場(?)を10月にオープンされたようで重ね重ねのお目出度である。 私はテッキリ「杉本博司美術館」という名称かと思いきや…
READ 2017.10.27 日記帳/先代の教え/ 国宝展を観る 現在、京都国立博物館で開催されている「国宝展」を観る。 お目当ては7世紀「天寿国縫帳」である。生地に「蓮」が使われているので一度、本歌を拝見したいと開門と同時に入館すべく早朝から出かけたが、あにはからんや、既に2〜300人の行列ができている。 …