READ 2018.02.10 日記帳/先代の教え/ 人生の達人 日課の散歩コースには多くの野鳥がやってくる。鴨、シロサギ、ゴイサギ、川鵜、鳩、雀、鳶、セキレイ、百舌、特に最近、小鴨が親鳥の後を追って泳ぐ景色はとても愛くるしい。 季節ごとに野草は美しい花を咲かせ一年中、飽きることない美を見せてくれるが、この自然界が与えてくれる恩恵でさえ無限ではない。 &n…
READ 2018.02.06 日記帳/先代の教え/ 私が消費者に伝えたい事 私は物作りを通して「上質」と「センス」を伝えるのが仕事だと思っている。上質な物をわかりやすい言葉で表現すると「薄くて軽く温かいもの」と言い換えてもいい。この定義は和服だけに限らず洋服の世界でも同じことがいえるのではないだろうか。 和服の中でも織帯に例えれば手織りのものは「薄くて軽い…
READ 2018.01.23 日記帳/先代の教え/ 京都人の義理人情 多分、もっとも長いご贔屓を頂いているお客様の1人が先斗町の現役芸妓さん、Tさんである。私が先代の供をして行くようになったのは60年ほど前になるだろう。若い頃のTはとても怖い芸妓さんでお手入れのものをお預かりに行くと二階の階段から投げてよこすようなことは当たり前で、呼び鈴を2回押したたけでも「うるさい…
READ 2017.12.22 日記帳/先代の教え/ 私の古裂活用法 人はいつも新しいものを求める。目新しい物をいつの時代も求め続ける性を人は持っているものである。 最新モードのデザイナーは新しいコンセプトを提案し形にして見せてくれる、それを女性は喜んで受け入れる。ドイツの高級車も7〜8年でモデルチェンジしドライバーはその目新しさに惹かれ、見飽きた車…
READ 2017.12.15 日記帳/先代の教え/ 長時間インタビュー体験談 NHKの海外向け番組「Core Kyoto」からのオファーで古裂の魅力について語る長時間インタビューを受けることになった。 何しろ初めての体験で、カメラを向けられた状態で質問に答えるのは容易では無い。さらに声帯が十分働かない健康状態で話をすること自体が辛い。 …
READ 2017.12.08 日記帳/先代の教え/ 今年の師走展 2017年の師走展も無事に終了した。大過もなく無事終了できたことを心より感謝申し上げます。 来場者も昨年ほどではないが120名を超える方が月末の忙しい中、銀座に足を運んでいただいた。 今年の特徴は月末、月初の開催となったため事前に京都に来て、お買上げいただく方が多…
READ 2017.11.15 日記帳/先代の教え/ 桃山時代にもあった上手と下手 私のコレクションの中にも「辻ヶ花」の上手と下手があることに気づいた。 画像① 「檜垣に藤菊文辻ヶ花染(桃山:16世紀)」 画像② 「扇面散らし文辻ヶ花染(桃山:16世紀)」 画像①は絞りがビッシリと密に施され隣り合う模様との境は狭く、絞りの輪郭が明瞭だが、②は模様が散漫で絞りの輪郭が甘…
READ 2017.11.08 日記帳/先代の教え/ 豊臣秀吉をめぐる不思議な縁 先日ある桃山時代の唐織裂を手に入れた。2m x 2mの長大な裂は竿通しが付けられ「風穴」(風を通す開口)が施された奇妙な裂である。 まず驚かされるのは、その色彩である。500年は確実に経過しているにもかかわらず、ご覧の通りほぼ完璧な色彩が残存している。 &…
READ 2017.11.04 日記帳/先代の教え/ 私の杉本博司論 今年の文化功労者賞に中村吉右衛門丈と杉本博司氏の知人2人が受賞されることになり大いに喜ばしいことである。 杉本さんは念願の美術館(?)もしくは隠居場(?)を10月にオープンされたようで重ね重ねのお目出度である。 私はテッキリ「杉本博司美術館」という名称かと思いきや…
READ 2017.10.27 日記帳/先代の教え/ 国宝展を観る 現在、京都国立博物館で開催されている「国宝展」を観る。 お目当ては7世紀「天寿国縫帳」である。生地に「蓮」が使われているので一度、本歌を拝見したいと開門と同時に入館すべく早朝から出かけたが、あにはからんや、既に2〜300人の行列ができている。 …
READ 2017.10.23 日記帳/先代の教え/ 美とは心地良さである。 世の中には色々な美が存在する。風景、人物、絵画、工芸品、音楽など、ありとあらゆる物に美と美でないものがある。数学の方程式にまで美があると言うから奥が深い。 そして美の本質は受け止め側の「心地よさ」であると思っている。人の顔やスタイル、気質など心地よいと感じる人と日常的に会ったり見た…
READ 2017.10.02 日記帳/先代の教え/ 聖観音立像 友人の陶芸家に依頼して作ってもらった陶仏の観音さまがようやく我家の坪庭に鎮座した。 友人は高校のクラスメートで清水六兵衛窯で長らく修行しただけあって腕は間違いない。抹茶茶碗や水指など茶陶を多く作ってきたが近年、陶仏や宝塔などを製作していたので観音さまの製作を依頼していた。 &nb…
READ 2017.09.04 日記帳/先代の教え/ 世間は広い 古裂が市場に出ないと嘆いていたら、京都在住のある男性が山のような数の古裂を売りに出したらしく、親しい古美術商が全部まとめて買い取ることになった。 手元に届いたとの連絡があり、早速、店を訪れると、まさに山のように積まれた古裂のコレクションを目にした。 話を聞くと、そのコレクターは全く古裂には興味が…
READ 2017.08.29 日記帳/先代の教え/ 本疋田が摺疋田へ、染めが印刷へ 江戸時代中葉から本疋田(本絞り)は少なくなり摺疋田へと移って行く。その理由は定かではないが二つのことが考えられる。 一つは幕府によって贅沢禁止の御達しが度々出され、そのやり玉に挙がったのが鹿子絞り(本疋田)であった。一目一目絹糸で絞って染められる技法は贅沢の象徴とされ、摺疋田へと移ったと考える。…
READ 2017.08.24 日記帳/先代の教え/ 「布の道標」展が無事閉幕 6月17日に開幕した「布の道標」展が過日8月20日、無事に終了した。 期待と不安の中、スタートした展覧会であったが終了してみれば 10,000人の来場者があり30,000円もする図録が30冊も売れるという予想外の成果報告を受け、満足感と感謝の気持ちで一杯である。改めて細見美術館の関係者の皆様にお礼…
READ 2017.08.18 日記帳/先代の教え/ Signature誌 ダイナースカード会員向けの季刊誌「シグネチャー」に現在開催中の細見美術館「布の道標」展を紹介する記事が掲載されている。 ライターのH女史は染織への造詣が深いとみえて「綺羅星、、」に使われている「綺」や「羅」が織物の名称だとご存知であった。 「羅」は現在でも織られているが「綺」は正体不明の織物…
READ 2017.06.22 日記帳/先代の教え/ 展覧会レセプション 6月18日、細見美術館に於いて「布の道標」展覧会、オープニングレセプションが開かれた。 私は相変わらず声が不調でスピーチは心配だったが、会の趣旨からして、私が一言挨拶しないわけにはいかないと意を決して御礼を述べた。 当日は快晴に恵まれ、招待客100名ばかりの前で5分ほどのスピーチを行なった。…
READ 2017.06.15 日記帳/先代の教え/ 古裂蒐集家 いよいよ17日から細見美術館に於ける展観が間近に迫った。 考えるに古裂蒐集家の数は非常に少ない。あの人気鑑定番組にも古裂が登場したのは、私の知る限り二度だけのことである。一度目は中国清朝の「龍袍」、皇帝の衣装である。二度目はサラサが数点の二回のみである。 その理由を推測すると衣裳は完全な形で…